はじめに
自分がいじり始めた2022年の1月頃は分割前でも2000~3000円でウロウロしていましたが今や2分割後でもその価格を遥かに超える上空まで行ってしまいました。
それでも盤石のセキュリティニーズとセキュリティに関する継続的な驚異を背景に業績を伸ばし続けていることに加え、浮動株割合が非常に少ないという特徴があり、短期取引にも相性が良いという特徴があります。
今やPER80倍水準という期待先行の株価を形成していますから、売上成長鈍化による株価の底抜けには気をつけつつもレンジの下限で拾っていく戦略は面白いところです。
セキュリティに関する事案は多く、それがカタリストになる場合も結構あったりします。政府としてもAIや量子コンピュータと並ぶ一大テーマとしてセキュリティを挙げていますからね。
基本情報
2023年3月期 第3四半期決算説明レポート
今回は2月10日に発表された第3四半期レポートを見ていきます。
まずは3Q累計の業績推移ですが、売上高がわずかに75%を下回ってはいるものの、利益を予想より伸ばしながら計画通りの売上推移を確保している点、非常に高く評価されるところかと思います。そもそも売上成長も前年比3割成長の目標でこの推移なので完璧です。
期末賞与引当、J-ESOP関連コストを計上しつつ営業利益大幅伸長というのは、社員に対する手厚い待遇を確保してなお大きな利益を確保しているということですね。ここ最近人の取り合いが激化している傾向にあり、岸田政権の狙っている給与上昇が進んでいるのはよいのですが、キーマンを他社に奪われてしまうのはかなり大きなリスクになります。その点を対策できているのは素晴らしいですね。
そのうえで売上高、営業利益とも「前年同期を上回る進捗」ということで、一瞬74.5%はどうなの?と思わせてしまう数字ですが、安心してくださいQ4にやや偏重の傾向があるのでこれから十分巻き返せますというところです。そのグラフは後ほどでてきます。
Q毎の売上推移をみると、きれいに1Qから4Qにかけて上がっていく傾向がみてとれます。
これはセキュリティなどの他社からすると本業ではなく足場がための位置づけになる投資については年度末に余った予算の消化として加速されやすい、という傾向があるからだと思われます。
圧倒的な利益進捗があるので全く問題ないですが、利益の額が2Q比マイナスになっている点が唯一このなかでいくと気にされる人はされるポイントですが、そういう方のために人的投資が理由であることを記載されています。将来に向けてどこかで投資はしないといけませんからね。ここに仕込みポイントを持ってきていて将来の伸びにつなげるのはうまいやり方だと思います。
Q4も利益に関してはスピード調整して人的投資分を確保されそうですね。というのも最後の方で出てきますが中期計画が非常にアグレッシブで、これを達成するためには事業規模をハイスピードで拡大していく必要があるためです。
大幅に伸びているのが「セキュリティソリューション事業」で、これはセキュリティ対策のソフトウェア導入とその運用サービスを提供するもので、教育やコンサルよりもまず即効性のあるセキュリティ対策を提供するものですね。中堅企業のセキュリティインシデントが多発しているなか、まずは応急措置をとっていくというのは良いアプローチです。
その上で教育やコンサルを通して恒久的なセキュリティ対策を顧客企業に植え付けていくというわけですね。
セキュリティに関するインシデント(事故)が起こったとき、応急措置から再発防止策の導入、そしてその防止策の運用までのフェイズがあり、そのすべてのフェイズをGSXはカバーしているというわけです。
人的資本投資等が1.54億円ということで、このQだけの話ではありますが少し少ないのかなという気もしなくはないですね。今後伸びてくるかもしれません。
広告宣伝費の減少がありながら順調な売上の伸びを見せているのは非常に良い傾向です。悪くとれば旺盛な需要に対して人員の確保が絶好調ではない、とみられなくもないですが、基本的には他の場所でいわれている中堅企業でのインシデント多発によるところが大きいでしょう。実際二事故が起こると啓蒙するための広告宣伝はそこまで必要ではなくなりますからね。
基本方針に中期成長を支える経営基盤に対する投資が謳われていますので、このまま利益を最大限伸ばしていって今年度着地させるというよりは、利益についてスピード調整して計画通りの着地をさせながら、残りの分を投資に回すとしています。
なので現状の利益進捗が80%だから、次もこの調子でいけば上方修正するはずだといって株価が織り込み始めると注意が必要な水準になると思われます。もちろん想定以上の特需で投資が間に合わずに利益計上ということになることもありえますが、上方修正期待の剥落で安くなる場面などを狙いたい形ですね。
ただ中期計画からして、次の本決算ではかなり強気の来年度見通しを出してこられそうですので、上方修正などがなくてもこれを好感して上がるということも十分考えられます。今年度順調だし、投資も進んでいるし、そうなると中期計画はアグレッシブですがこれを下方修正する理屈は見えないですよね。
中期計画がアグレッシブな分、配当は株価に対してかなり控えめにはなっています。これはもうどっちを取るかという話で仕方がない部分かと思います。
セキュリティ需要が旺盛な伸びを見せている現時点では、配当よりも成長に投資するというのは自然なことでしょう。
まるでそびえ立つブルジュ・ハリファかなと思うほどの壮大な中期計画ですね。これは素晴らしいの一言であります。
しかも他のグロース企業でありがちな、先端の方はM&Aで伸ばす、非線形な成長で伸ばすといった根拠の希薄なものではなく、現状事業をそのままオーガニックに伸ばすだけでこの成長を計画してしまうのが凄いところです。
その意味で足元の成長性が若干心配なITソリューションは大丈夫なのかなと思わなくもないですが、セキュリティソリューションの成長がやや保守的に見積もられていることと相殺される形なら問題ないかもしれません。
売上伸長に加えて営業利益率もとんでもない伸びを示す形になっていまして、ここはさすがに点線になっていますね。この売上&利益率の伸びを実現しようとすると、自社の努力だけではなく経営環境がよくなっていかないと、という前提はあると思います。そのあたりはセキュリティの社会ニーズをよく観察していきましょう。
ただ株価はPER80倍水準ですので、この利益が今期のさらに倍になっていった上に、更にその先に成長があることをすでに織り込んだ株価になっているとみなせます。この状態で仮に売上に関して下方修正が出るような事態になると、昨今話題のEDPのように一気に株価が半値以下になることも考えられます。そのくらい株主は強気であるということですね。
丁度4等分のようになっているからバランスがいい、かどうかは客観的にはよくわかりませんね。大きく見るとそもそもがセキュリティ一本足打法なので、セキュリティ需要が低減することに関しては相当なリスクがあるといえるとは思います。
なのでリセッションが本格的になってくると警戒感を強める必要があります。セキュリティ投資を手控えざるを得ない状況が発生した場合が、GSXにとって最大のピンチになりえます。
この大企業と中小企業のセキュリティ格差が事業のコアコンピタンスということですね。
大企業ではセキュリティはもう重要インフラであって、他社に任せて良い部分ではないですからね。
ただやはり中小企業中心となると、リセッションの影響をモロに受けてしまうというリスクは少なくないことを心に留めておきたいですね。
おわりに
GSXの決算報告書をみてきました。ポイントは以下だと考えています:
- 少数の浮動株、値動きが良い
- セキュリティ需要は旺盛で、現状経営基盤は盤石
- PER80倍と超割高水準、これ以上の上値追いは危険
- リセッションが強まった場合特に注意
というところで、株価は高値圏ですが上下の変動が激しく、下値不安は大きな前提が崩れない限りそこまでない人気銘柄ですので短期トレードでレンジを取るのに向いているのではと考えています。
このチャートを見ると、高値を取ったところから1000円ほど下がったあたりから買い始めるのがよさそうに見えますよね。